お菓子の変遷、お菓子作りにとどまらない場作り、体験作り、組織の革新。
創業130余年にわたる歴史を振り返り、わたしたちの今につながるあゆみのポイントを解説していきます。
1887年
春華堂の原点は甘納豆
春華堂が創業して初めて作ったお菓子は、実は「甘納豆」でした。
宇津ノ谷峠に、茶屋の息子としてに生まれた山崎芳蔵が、故郷を離れ浜松へ渡って以降売り始めたのが「甘納豆」。それが春華堂のはじまりでした。芳蔵は、当時浜松の寺院でお歳暮として配られていた「浜納豆」に着想を得て甘納豆の発明に至ったといいます。「甘納豆」は、万人受けする甘さと日持ちの良さも相まって浜松土産の定番となりました。贈り物としての春華堂のお菓子の歴史は、創業時から根付いていたものなのかもしれません。
1949年
2代目・山崎幸一により有限会社春華堂設立
時は下り、芳蔵の息子、幸一が2代目として芳蔵の後を継ぎます。幸一は、日本固有の鶏「ちゃぼ」の卵に見立てた和菓子「知也保」を考案。こちらも風雅な竹籠入れのパッケージが支持され、甘納豆に継ぐ贈答品の定番ヒット商品となりました。その後、幸一によって「有限会社春華堂」が設立されました。
1961年
「浜名湖名産・夜のお菓子 うなぎパイ」誕生
先述の通り、創業明治二十年の老舗菓子店でその歴史の中には「甘納豆」「知也保」等の看板商品がありました。しかし、二代目社長の幸一はそれを超える新しい浜松ならではのお菓子を作りたいと日々思案していたそうです。
そんな中、とある旅先で耳にした「浜名湖といえば、うなぎが美味しいところですよね。」という言葉をもとに、浜名湖周辺の素材である「うなぎ」を活かすことをひらめきます。当時浜松よりも有名だった浜名湖の素材である「うなぎ」と、日本ではまだ珍しかったフランス菓子の「パイ」を組み合わせ、「うなぎパイ」が考案されたのです。
「夜のお菓子」というキャッチフレーズには「家族団らんの時間に食べてほしい」との想いが込められ、幸一が医学の道を目指していたこともあり、「みんなが元気になる」栄養食品としての意味も含ませました。
もともと栄養価の高いうなぎに体力回復、視力保持に良いとされるビタミンA、隠し味にガーリックを使い、販売を開始した「うなぎパイ」は、異色の組み合わせと「夜のお菓子」というキャッチフレーズといった遊び心が功を奏して、60年以上のロングセラー商品に大きく成長しました。
本気で遊び、どこにもない価値を創造するというわたしたちの革新の原点はここにあります。
2005年
うなぎパイファクトリーが完成
そのユニークさをテレビでも露出し、すでにロングヒット商品となっていたうなぎパイ。2001年以降、現在の代表である4代目・山崎貴裕の入社をきっかけに、ブランディング・マーケティングに注力することに。製造部、営業部、直営部、総務部に加え、商品企画と広報宣伝業務を兼務した企画部が立ち上がり、さらに遊び心をきかせたグッズや公式キャラクターの「うなくん」が誕生しました。
そして、「うなぎパイのひみつを知ろう」をテーマに、一般のお客様に工場見学をしていただける「うなぎパイファクトリー」をオープン。当初、企業秘密保持の観点から、工場見学には反対の声も多数。しかし、お菓子そのものをお届けするだけでなく、「お菓子を通じて人々を喜ばせたい」という理念のもとで実現に踏み切りました。その結果、オープン初日の来館者はなんと1万人!現在では年間70万人を超える来館者が訪れる施設となりました。
工場見学を楽しみながら、職人の手わざでうなぎパイを作るというこだわりを感じていただくという「食育」のタネにもなっています。
2014年
うなぎパイにとどまらない、場作りと新ブランドへの注力
うなぎパイファクトリーのオープンを皮切りに、うなぎパイにとどまらない提供価値の追求は加速していきます。そして「お菓子の新しい文化とスタイルを発信する、浜北スイーツ・コミュニティ」というコンセプトのもと、「nicoe」をオープンしました。社内で発足した「nicoe事業部」と名だたるクリエイターにより構想から4年をかけて実行に至った、わたしたちの「本物を重ねる」というこだわりが光る場になっています。
さらに、今度は日本らしさを取り入れた「五穀屋」、「粉」を味わい楽しむ「こねり」が誕生。うなぎパイに継ぐブランドの創出に着手しました。
2016年
カカオラボのオープン。「食育」に着手
子どもたちが食に触れる「食育」、パティシエなど「食」にまつわる「職」に触れる「職育」の場として、nicoe内にカカオラボをオープン。実際のチョコレートづくり体験を通して、チョコレートがどれだけの工程を経て手元に届くのか、カカオ豆や生産地にはどれほどのバリエーションがあるのかを楽しく学べます。
体験をレクチャーするのは春華堂のメンバー。カカオラボのオープンには、もともと春華堂のお菓子で扱ったことがなかったカカオを取り入れた商品作りを進めるにあたり、わたしたちがカカオについて熟知する必要があるという背景もあります。
2021年
SWEETS BANK誕生
日本一行きたくなるオフィスを目指し、本社の新社屋に一般客の方も使っていただけるカフェやショップも併設した「SWEETS BANK」をオープンしました。
建物の外観は大きな食卓を模しており、「家族団らん」をイメージしています。
このSWEETS BANKは浜松いわた信用金庫との複合施設にもなっており、外観・機能を含め浜松のまちづくりを担う場となることを目指しています。
「菓子屋」からブレることなく、お菓子のさらなる可能性を追求し、「攻め」の姿勢で新しいことに挑戦し続けてきた春華堂。しかし、まだまだ変革は止まりません。
続きが気になる!という方は、「これからの春華堂」も見ていただけると幸いです。